音楽を聴く場所(2)

自分の使う言葉で書かれたものを読めることを幸福に思うのは、夏目漱石や須賀敦子とかの文章を読むとき。 次にこうした本、行間が多くあるテキストに会えたときにはありがたく思う。行間に多くのものがあるとき、書かれる過程で失われたもの、付け加えられた…

音楽を聴く場所(1)

ベルリンフィルの現コンサートホールはベルリンの壁に沿って建てられている。爆撃によって1944年に旧ホールが焼失し、戦後コンペによって設計者としてハンス・シャロウンが選ばれ1960年から63年にかけて建設された。ベルリンフィルは1882年創設。『音楽の<…

『胡散臭い知』(1)

「第二帝政のブルジョワ大衆社会」、『音楽の<現代>が始まったとき』(浅井香織著)の第1章第3節はこの言葉で始まる。引用を続けると「…は貪欲な視線の視線の交錯に支えられたものであったが、実はその視線は二重化という前代未聞の、だがこれ以降現代に至…

使わないと伝えられない(1)

スティーブ・ジョブスの短い伝記的なテレビ番組を観た。情報としては受動的に受け取りやすいのだが、その情報は希薄になってしまう、それがテレビらしいと言えばらしいのだが。昔子供のころ読んだSF小説(タイトルもストーリーも覚えていないが)で、未来社…

文化的「一方通行」

建築という言葉の翻訳についてなにか書いてなかったかと思い『翻訳と日本の近代』を探したが見つからず近所の図書館で借りてきた。今は在庫検索というシステムがあって探すのに便利。さて借りてきた新書だが詳細な記述はなく、それは本のはじめにあるように…

背景としての1900年前後

フランスの第2帝政期における音楽についての本『音楽の<現代>が始まったとき』に1860年に徴税請負人の壁が取り払われパリ市が拡大すること、1841年からティエールによる外郭の建設とそれが1928年までに撤去されたこと、その時代1862年に遣欧使節団がパリを…

括弧付きの言葉

様々なところにその老建築家の残した跡をみつける。それはなにかの折り折りに道に迷った者たちが行くべき方向を尋ねてきたという証しであり、その多さが痕跡としてあるということなのかもしれない。「わたしは磯崎新というミラー・メイズのような始末の悪い…

イタリア紀行

先の建築家が『イタリア紀行』について記していたのを思い出して、岩波文庫を探し出し、ヴィチェンツィアの部分をざっと読み直してみた。文庫には第1刷が1942年とある、ちょうど今放送されている「カーネーション」の時代。戦間期であっても本は出版されてい…

パラ―ディオを語る建築家

パラ―ディオについて前に少し書いたが、そのパラ―ディオに関連する動画を。磯崎新という建築家をして、30年近く経たなければパラ―ディオが何故重要だと言われていたのか、分からなかったと言わしめている。 何故16世紀のひとりの建築家が現在においてもこれ…

ヴィチェンツア

雑誌でパラーディオの特集が出たのでしばらく考えてから購入した。考えた理由はまた本棚に置いたままになるのではということと、パラ―ディオに関して知ることが実際の仕事とどう結びつくのかという功利的な考えがあってだが、買わなくてあとになって入手が困…

茶の間からリビングへ

本棚に詰め込んであったりした本の中から建築に関する本を取り分けて事務所の本棚に置いてみた。このままではまた読まないままになると思い、少しずつ読み始めることとした。そのひとつが西川祐子の『住まいと家族をめぐる物語』である。本書は大学での学生…

カーネーション

NHKの朝ドラにはまっている。たぶん理由は二つ。ひとつは主人公がものづくりが、この場合は洋装なのだが、好きだというところ。それを商売にしているのだが、でも根底がそれによって儲けることではなくて、自分の作った洋服を着た人が喜んでくれることの…