カーネーション

NHKの朝ドラにはまっている。たぶん理由は二つ。

ひとつは主人公がものづくりが、この場合は洋装なのだが、好きだというところ。それを商売にしているのだが、でも根底がそれによって儲けることではなくて、自分の作った洋服を着た人が喜んでくれることのほうに喜びを感じるというところ。

もうひとつは、岸和田の風景の中の生活にある。和服から洋服への変化、電気製品が入って来て、特に電気扇という呼び名にそうだったんだなんて思いながら、でもまだ共用の井戸があってそこでたぶんみんなで洗濯なんかしていたんだろう、とか・・・当時、水道はどうだったか?風呂はたぶん公衆浴場だろうしトイレはとか、想像してみるといろいろ気になるのだが、ともかく当時の庶民生活の様子が描かれているところが面白いのだ。
女性が自立するのに、この服装と家事労働の変化が大きく影響したんだろうことは想像に難くない。ちょうどそうした時代に主人公は育ち、たくましく生きていく。その生き様がなんとも格好よくて魅かれるのである。

自分で町屋の格子を取っ払ってショ―ウィンドウにしてしまうのもすごい、それで明るくてすっきりした店になるのだが、今となるとその格子とか入口の土間とかのほうがなんとなく懐かしい。板の間との間の上り框に腰かけて話しをするのは、履きモノを脱がなくてもいい気軽さがある。それは田舎で農家の縁側に座って近所の人たちが茶飲み話しをするのと同じである。土間がそうした外でもなくて内でもない、あいまいな心地よい場となっている。そこがまたドラマの中でよく表現されている。

ニ階建の軒入りの町屋が並ぶ街並み。近所の人たちも自分のところで商売をしていてそこで生活をしている。自分たちの住んでいる町の中で十分生活が成り立っていたのがわかる。でも時代はどんどん変わっていく。主人公の同級生の男の子は学校を卒業して工場に働きに出るのだが(なるほど学校とはこうした労働者の養成機関なのだなと)、彼は工場でのつらい労働に耐えられなくなってやめて近所の和菓子屋に勤め直す。
働く場所が自分の家や街ではなくなっていく。こうして生活の場と職場が分離し始める。あるいは買い物でも、ちょっといいものは大阪の百貨店に出かけるようになり、町の中で成り立っていた生活がその外に否応なく拡がって行く。こうして少しずつ町がほころびはじめていく。

これからの展開、戦争に突入してそれから戦後、どのようにこの生活風景が変わっていくのか、昭和という時代の庶民の生活史として見てもすごく興味のあるドラマである。

蛇足で、街並みとか生活とかかなりしっかり時代考証されているなと思ってネットを調べたらカーネーション公式サイトのページに記述があって、なるほどである。

カーネーション オリジナル・サウンドトラック